マスクやトイレットペーパーの不足
#オイルショック #デマ
#品不足 #新人間革命
新型コロナウイルスの感染拡大を懸念してのマスクやトイレットペーパーなどの買い占めが相次いで報告されています。
ネット上にはツイッターを中心に、
「トイレットペーパー まだないんだけど」
と、自らの周辺では品薄が解消していないとする不安の声が続々と寄せられています
今回の品薄状況にはさまざまな要因が絡んではいますが、
「普通の人々」がデマ情報は信じていないながらも「念のため」と思って購入に走った結果も一因と考えられる。
人々をこれらの商品の購入へと走らせた原因は何なのでしょうか?
新人間革命18巻 前進の章より
このころ、伸一が懸念していたのは、日本経済の行方であり、人びとの暮らしが脅かされつつあることであった。
――それは、この一九七三年(昭和四十八年)の十月六日、アラブ諸国とイスラエルが戦いに突入し、第四次中東戦争が始まったことがきっかけであった。
戦争が始まるとアラブ諸国は、原油公示価格を大幅に引き上げた。
また、イスラエルを支援するアメリカなどへの石油供給の削減を打ち出したのである。
日本に対しては、サウジアラビアの国営石油会社が、原油価格を七〇パーセント引き上げることを伝えてきた。
さらに、メジャー(国際石油資本)も、原油の大幅な値上げや供給の削減を行ったのだ。
アラブの石油政策は、世界経済全般に大きな打撃をもたらしたが、なかでも安価な石油を大量に輸入することによって、経済発展を遂げてきた日本の衝撃は大きかった。
日本の場合、石油は、一〇〇パーセント近くが輸入であり、しかも、そのうち八割以上が中東諸国に依存していた。
「石油がなくなる!」
「日本経済はどうなるのか!」
日本は大パニックに陥った。いわゆる「オイルショック」である。
政府は、企業に対して石油・電力の使用規制を行い、国民全体にも暖房の温度を下げたり、マイカーの使用を自粛するなど、エネルギーの節約を呼びかけていった。
街のネオンも消え、テレビの放送終了時間も早まることになった。
原油価格の引き上げは、石油関連製品の大幅値上げを引き起こし、各企業を窮地に追い込むとともに、人びとの暮らしを追い詰めていった。
たとえば、前年十月、札幌では灯油十八リットルの小売価格が二百九十八円であったものが、一年後には四百十二円になっていたのである。
彼方の中東での戦争が、暮らしを圧迫し始めたのだ。
人びとは、世界は深く連関し合っていることを、改めて痛切に感じざるをえなかった。
37 前進(37)
不安は、人間を異常な行動に駆り立てる。
日本では、以前から紙など物資の供給が需要に追いつかず、モノ不足が深刻化しつつあった。
また、大商社が、さまざまな製品を買い占め、売り惜しみ、物価の高騰をもたらしていることが指摘され、問題となっていた。
そこに、この「オイルショック」が起こったのだ。そして、トイレットペーパーは、乾燥工程で重油を使っていたことから、「やがてなくなってしまう!」という噂が流れたのである。
その噂に驚き、慌てて、主婦らがトイレットペーパーを買っておこうと、スーパーなどに殺到したのだ。
この消費者の行動が、さらに品不足をもたらし、スーパーからトイレットペーパーが消えてしまうという事態が生じたのである。
その買いだめ騒ぎのなかで、兵庫県では、八十三歳の女性が押し倒されて、左足を骨折するという事故も起こった。また、洗剤なども買いだめの対象となった。
こうした状況のなかで、さまざまな商品の便乗値上げが行われていった。それによって人びとの暮らしは、ますます逼迫していったことはいうまでもない。
そして、石油危機を契機に、時代は世界的なインフレと不況に突入していくのである。
日本はこれまで、豊富で安価な輸入資源に頼って、大量生産、大量消費の構造を築き上げ、経済成長を遂げてきた。
だが、この「オイルショック」によって、そうした日本経済の在り方そのものが、転換を迫られることになるのである。
山本伸一は、国際社会も、日本も、大きな曲がり角にさしかかったことを痛感していた。
時代はまさに激動していた。そのなかで一人ひとりの同志が、社会の荒海に挑み、人生の勝利を飾っていくのは、並大抵のことではない。
しかし、その実証を社会に打ち立ててこそ、仏法が時代を建設する価値創造の哲理であることを証明できるのである。
闇夜の海にこそ、灯台の光が求められるのだ。
学会では明一九七四年(昭和四十九年)を「社会の年」と定めて前進することが決まっていたが、その意義も、まさにそこにあったのである。
38 前進(38)
十一月二十三日、山本伸一は、東京・大田区体育館で行われた品川区幹部総会に出席した。
彼は、この日、約三十分にわたりスピーチを行い、人びとの暮らしを圧迫している深刻なモノ不足、物価の高騰に言及していった。
「皆さんの品川区や、この会場のある大田区には、工場などを自営しておられる同志の方々も、ずいぶんと多い。
今のような時代には、経営の苦労はまことに大変なものであろうと、いつも心配しております。
どうか、この激動に足元をすくわれることなく、むしろ、今こそ、信心の功徳というものを、見事に、堂々と示し切っていただきたい。
それが、私の願いであり、祈りであります」
伸一は、仏法の眼から見た時、社会の混乱の奥にある根本原因は何かについて語ろうと思った。
彼はまず、「諌暁八幡抄」の御文を拝した。
「八幡の御誓願に云く「正直の人の頂を以て栖と為し、諂曲てんごくの人の心を以て亭やどらず」等云云」
「八幡」とは「八幡大菩薩」のことで、農耕神や銅産の神などとして崇められてきた、正法を護持する者などを守護する諸天善神である。
諸天善神とは、国土、民衆を守り、福をもたらす宇宙の働きであり、衆生の一念に対応する外界の働きのあらわれといえよう。いわば、大自然や社会のもたらす、さまざまな恩恵も、諸天善神の働きといえる。
そして、この「八幡」は、正直の人の頂、つまり頭をすみかとし、心が曲がった不正直者のところには宿らないというのである。
ここでいう「正直」とは、単に自分の心に嘘や偽りがないということではない。
人間の心は揺れるものだ。欲望に支配され、誤りを犯すこともある。
したがって、真実の教えや正しい規範に対して正直であるということである。
大聖人は、正直には、「世間の正直」と「出世の正直」の二つがあることを述べられている。
「世間の正直」とは、社会での人の道を違えぬことであり、「出世の正直」とは、仏法のうえで真実の教え通りに、誤りなく生きることである。
39 前進(39)
日蓮大聖人は、人びとの「正直な心」が失われ、人の道にも、仏法の道にも外れてしまったがゆえに、八幡大菩薩は去り、社会は不幸の様相を呈したと指摘されているのである。
山本伸一は、人びとの生活を脅かしている、現在のモノ不足、インフレは、資源は無尽蔵であるかのように考え、大量消費を煽ってきた結果であると見ていた。
そして、その背後には、欲望に翻弄され、便利さや快適さばかりを求める人間の生き方がある。
また、一部の商社による買い占めなどに顕著なように、モラルを失った営利追求がある。
伸一は訴えた。
「『世間の正直』という観点から見た時、たとえば、今の政治が、国民への奉仕に徹する『正直さ』をもっているか。
では、経済はどうか。
東南アジアでは反日感情が強まり、日本は経済侵略を企てているとの批判も出ています。
それは、相手国のことを考えず、利益優先主義で進んできた、『不正直さ』が露呈したものといえます。
また、『出世の正直』という観点ではどうか。
現代は、現世主義に陥り、正しい生命観、すなわち『三世の生命』『永遠の生命』を説く仏法を、全く無視しようとする風潮が強い。
現在は″仏教書ブーム″とはいわれていても、真実の仏法である日蓮大聖人の仏法には、反発こそすれ、なかなか耳を傾けようとはしない。
したがって『出世間』においても、『不正直』といわざるをえない」
さらに、伸一は、この「不正直さ」が、″自分以外に信用できるものは何もない″といった疎外感や、虚無的な不信感をもたらしていることを指摘し、こう訴えた。
「しかし、大聖人は、去っていった八幡大菩薩も、『法華経の行者・日本国に有るならば其の所に栖み給うべし』と仰せです。
広宣流布を使命とし、人びとに真実の仏法を、人間の道を教えようと、日夜、活動に励む私どもは、現代における法華経の行者であります。
その私たちの戦いによって、人びとが正法に目覚めていくならば、八幡大菩薩をはじめ、諸天善神は再び帰り、その働きを示してくれるとの御断言であります」
40 前進(40)
歴史学者トインビー博士は、強く訴えた。
「人類の生存に対する現代の脅威は、人間一人一人の心の中の革命的な変革によってのみ、取り除くことができるものです」
人間の心が転換されれば、その営みも変わり、社会環境、自然環境をも大きく変えていくことができる。
「オイルショック」による社会の混乱も、その転換の道は、究極的には人間自身の変革、つまり人間革命しかない。
山本伸一は、品川のメンバーに、祈るような思いで語っていった。
「この社会的な経済危機を乗り越える道は、結局、正法の流布以外にありません。その使命を担っているのが、皆さんであります。
こういう荒々しい世相の時には、人間の弱点が表面に出てきて、一攫千金を夢見たり、その場しのぎの安易な解決策に走ったり、利己主義に陥ったりしがちなものです。
しかし、大事なことはどこまでも唱題第一に、広宣流布の使命を断じて忘れることなく、智慧を絞り、活路を開くために努力し抜いていくことなのであります」 7d09
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